世界金融市場を正常化させるためには強い権限を有した国際的な金融監督機関が必要

ジョージ・ソロス 特別寄稿 「世界を覆う危険な金融保護主義 “二番底”という我々の未来」 - ダイアモンド・オンライン
http://diamond.jp/series/dol_syndicate/10002/

世界的に有名な投資家のGeorge Soros氏の特別寄稿がありました。Soros氏は2008年の世界的な金融危機について安易に楽観視するべきでないと説いています。

顔写真があり、示唆に富んだ論考もあって、刺激的な記事でした。

 だが、現在、「グローバルな金融システムは崩壊を免れた」「ビジネスは通常の状態に徐々に戻りつつある」という見方が広まっているものの、これは現在の状況に対する深刻な誤解である。ハンプティ・ダンプティは二度と元の姿には戻せないのだ(※訳注:ハンプティ・ダンプティマザーグースの童謡に登場する。割れた卵の比喩)。

 だが、こうして登場したグローバル金融システムは根本的に不安定なものだった──金融市場は、好き放題にやらせておいても安全だという誤った前提に立脚しているからである。グローバル金融システムが崩壊したのも、そしてそれを再び元の姿に戻せないのも、それが原因なのだ。

Globalな金融市場で跳梁跋扈したhedge fundは、更なる利益を求めて、あらゆる規制(Glass-Steagall法など)を豊富な資金を使って廃止させていき、遂には自滅するものまで出ました。Gameというものはruleがしっかりしているからplayできるのですが、ruleをどんどんぶっ壊していけば、それはもうぶっ壊れるplayerが出てくるのは当然です。Hedge fundは自分で自分を食うOuroborosみたいなもので、適正な規制は絶対に必要です。

 したがって、規制は、その範囲という点において国際的なものとなる必要がある。さもなければ、グローバル金融市場はレギュラトリー・アービトレージ(規制裁定取引)によって破壊されてしまう。つまり、企業は規制環境が最も緩やかな国に移転し、それ以外の国は、とうてい抱え切れないほどのリスクに晒されてしまう。

国際的な機関(あるいは世界政府)がないため、規制の緩いところ以外が大損してしまうので、各国とも適正な規制がなかなかできないということです。Chicken raceみたいなもので、これは健全とは言えません。強い権限を持った国際的な金融監督機関の設置が要請されるところです。

 グローバリゼーションが成功したのは、それによって各国が規制の解除を余儀なくされたためである。だが、このプロセスを逆転させてもうまくいかない。統一的な規制に向けて各国の合意を得るのは難しいだろう。国が違えば利害も異なる。だから各国は異なるソリューションを志向するのだ。

 この実例を欧州に見ることができる。欧州連合の加盟国は、金融に関する統一的なルールについて合意できていない。欧州連合でさえできないことが、いったい世界の他の地域で可能だろうか。

やらなければ世界経済が破綻するのであれば、それはやらなければならないでしょう。

 1930年代、貿易保護主義が、ただでさえ悪い状況をいっそう悪化させた。今日のグローバル経済においては、金融保護主義が、当時よりもさらに大きな危険となっているのである。

明言してはいませんが、これは世界大戦の可能性を暗示しているのでしょう。