市場は生態系に似ていて、未来の予測は難しい

市場万能説に代わる新理論AMHとは? - ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
http://newsweekjapan.jp/stories/business/2010/01/post-943.php

「効率的市場仮説(EMH)」に代わる新理論「適応的市場仮説(AMH)」を紹介しています。

EMHは市場は入手可能な全ての情報を反映しており、市場参加者は理性的で市場価格は安定しているという理論だそうですが、まあ、そんなことはありませんし、その欠陥が露呈したことは何度もあります。市場が失敗するたびに戦争をしたり、税金が投入されたり、企業が国有化されたりなど、市場の外側でのultra Cで何とか乗りきってきたのがこれまでの世界経済の歴史でした。

EMHは市場を正しく記述するための理論というよりは「市場とはこうあるべきだ」、「世界はこうあるべきだ」という理念に近いものではないかとも思えます。では、新しく提唱されたAMHはどうでしょうか。

AMHは市場を生態系と見なし、市場が全ての情報を反映しているわけではない、市場参加者は理性的でないという、より自然環境に近い条件を前提としています。直観的にはEMHよりは現実を反映した理論になりそうだと思います。

しかし、AMHは統一的に未来を予測可能な理論にはなりえないでしょう。過去の生態系の変動の理由を見つけることは比較的容易でしょうが、それで未来が簡単に予想できるわけではありません。何故なら、生態系の変化や生物の進化はどうやら偶然によるらしいからです。未来は予想できたとしても、それは確率的にということです。

単純な神経系しか持たない生物しかいなかった時代なら生態系の変化を予測することはまだ容易だったかもしれませんが、人間のように複雑な脳を持つ個体が60億もいるようなこの地球の未来を正確に予測できるほうがおかしいでしょう。人間1人の明日の行動を正確に予測することすら難しいわけですから。

結局AMHは「市場は生態系に似ていて、予測することは難しい」という程度の理論にしかならないのではないでしょうか。複雑であることは分かるが、未来が予測できるわけではないということです。