中国が経済的に世界一になったときが中国の命運の分かれ目

独占企業の方が、研究開発は盛んになる (15.013 Industrial Economics) - My Life in MIT Sloan
http://blog.goo.ne.jp/mit_sloan/e/63c6cd4279b9975e530af704b055faf1

競争の激しい産業よりも一社独占の産業のほうが研究開発が盛んになるそうです。これは意外でした。

ところが、歴史を見ても、研究開発により投資して来たのは独占企業なのだ。

実際、1970年代から世界の研究開発を引っ張ってきたのは、全て独占企業だった。
例えば、アメリカの電話産業を独占していた、AT&T(ベル研)。
メインフレーム市場を独占していた、IBM
カメラフィルム市場を独占していた、Kodak
コピー機市場を独占していた、Xerox (Parc)。
こういったところは、独占時代はいわゆる「中央研究所」を作り、多額の研究投資をし、ノーベル賞を大量に出し、現代のIT社会の基礎技術を作ってきた。
しかし、分割やら何やらで、独占的地位を失うとともに、研究開発費は圧倒的に削減されていった。

というわけで、単に研究開発を進ませる、という目的なら、実は独占状態の方が理想的なのだ。
それだけ投資できるお金があるからね。
たくさんのイノベーションを生んだ、ゼロックスのパロアルト研や、AT&Tのベル研のようなものが理想なら、
独占市場にもう一度ならなければ難しい、という、現代の競争志向とは全く逆の結論が出てくるのであった。

ちなみに、これを国を挙げてやってるのが中国らしい。

例えば携帯電話業界では、敢えて世界標準の技術ではなく、中国独自の技術を開発することで、他社の中国市場への参入を防ぎ、中国企業による、独占状態を作り出しているのだという。
しばらく独占状態を続けることで、中国企業に莫大な利益を上げさせ続ける。
こうすることで、5年後・10年後には、国からの援助がなくても民間だけで、世界の標準的技術をリードできるだけの、研究開発の原資を作ってあげてる、ということだ。

そもそも論で言えば、企業が堕落しないのであれば、独占状態が最も効率が良いわけで、企業を堕落させない仕組みがあるのであれば、独占状態も一概に悪いことではなく、それを身をもって実践しているのが中国ということになるのでしょう。

企業が堕落しないようにするには、それを監視する国の行政機関が堕落してはならないわけですが、中国のような米国や日本に凄まじい対抗意識を持っている国の場合はそれを維持することもまだ容易なのでしょう。現状の中国の行政機関にも堕落はあるでしょうが、今のところ成果も出てますし、上手いこと舵取りをやっているように見えます。

問題は中国が経済的に世界一になったときです。China as No.1を自他ともに認めるようになったとき、日本と同じように慢心、気の緩みから奈落の底に転がり落ちることも十分考えられます。中国はそのときどう対応するのでしょうか。

日本と中国の違いは、日本が自由主義的、民主主義的な国家であるのに対し、中国が社会主義的、独裁的な国家であることです。この点が中国と日本の未来に、もしかしたら差異を齎すのかもしれません。