資本主義は独裁者を生み出さないためのsystem

資本主義という不平等で有害なシステム - ブローデル『歴史入門』 - アゴ
http://agora-web.jp/archives/825869.html

池田先生の率直な資本主義観が表れているようで、中々興味深く読めました。

それは経済学の教科書に書かれている等価交換システムで、最終的な均衡状態では誰も損も得もしない。

ここで言う等価交換とは理想的な状態での話であって、現実的にはそんな状態はやってきません。情報格差、能力格差があるかぎり、等価交換というものはありえません。市場で決定される価格というものは、建前としてはお互いが納得している等価交換ということになっていますが、実際は買い方、売り方のどちらかが得をして、どちらかが損をしています。つまり、強者がさらに勝ち、弱者がさらに負けるようになっています。それを搾取と呼べるかどうかは微妙ですが。資本主義は(資本主義以前に比べれば)平等なsystemですが、理想的な状態はありえないため、結果的には不平等になってしまいます。

著者も、資本主義に代わるシステムを提案しているわけではない。残念ながら向こう100年ぐらいは、人類はこの出来の悪い経済システムとつきあってゆくしかないのだろう。

池田先生は半ば諦めのように締めくくっていますが、I.S.としても同意見です。本質的には、資本主義も民主主義も変わりません。多数決のsystemです。これは、誰か優秀な者に全てを委ねるのではなく、大人数による合議で物事を決めていくという思想が根底にあります。

完全無欠でこれ以上ないほど優秀で、永遠の命を持った人物がいれば、その者が全世界を支配することが人類にとって最大の幸せになるでしょうが、それは理想論であって、ありえません。だから、人類は、今のところは、資本主義と民主主義を次善の策として採用しているわけです。資本主義と民主主義は独裁的なleaderを生み出さない、効率的ではないが、robustなsystemです。

全世界の国々が全て資本主義と民主主義を受け入れれば、現在のEuropaのように大きな戦争がほとんどありえない状態にまで持っていけるでしょう。民主国家においては、戦争を起こすことは頗る難しいことだからです。また、民主国家は、弱者の側に不満が溜まっても、それが革命といった形で暴発することをできるかぎり抑制し、政治闘争にその形を変えさせがちです。だから、平和な世界を目指すのであれば、我々は独裁的な政治体制を取る国家に対して、できるだけ拒否の態度を貫くべきなのです。

資本主義と民主主義は世界を平和にするでしょう。ただし、世界中がその思想で染まるまでは戦争、紛争が絶えることはないでしょう。弱者が政治闘争、経済戦争よりも、武力行使を選択する余地があるかぎり、戦争、紛争がなくなることはありません。

そんな世界で我々がどうやって生きていくかということですが、その答えはただひたすら己を磨き、市場性のある能力を身に付け、経済戦争に勝ち残っていく、これに尽きると思います。

状態が理想的ではないので、中にはどうしても能力が足りなかったり、努力ができなかったりする人たちがいるのは当然ですが、そういった人たちにはbasic incomeや負の所得税で生活を保障することが望ましいでしょう。