株式会社をより民主的にし、社会から浮かないようにするためには、株主総会の上下両院化が必要

グーグル共同創業者、社株式を段階的に売却へ--議決権が過半数を割る見通し - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/biz/it/cnet/archive/2010/01/25/20407263.html

Google共同創業者のLarry Page氏とSergey Brin氏は、今後、保有する同社株式を段階的に売却していって、2014年には両氏の保有する議決権が過半数を割ることになるようです。

どういう目論見があって議決権を減らすのかは分かりませんが、少しでも民主的になるように、独裁色を減らすことを目的とするのであれば、それはGoogleにとって良いことなのでしょう。


株式会社の仕組みは立憲主義の国家の仕組みを模していますが、完全ではありません。違いの最たるものは、株式会社は全く以て民主的でないということです。単純に出資した額が多い、大株主の議決権が多く、そうでない中小株主の議決権は少なくなっています。ある意味これは当然なのですが、そこに株式会社が抱える矛盾点、問題があるとI.S.は見ています。

国や地方自治体は民主国家であれば民主的なprocessで政策決定がなされ、良くも悪くもそこに自由があり、民衆の自立心や参加意識を向上させます。しかし、株式会社の場合はこうはいきません。過半数の議決権を持ったたった1人の意見が簡単に罷り通ってしまいます。会社が小さいときは却ってそのほうが効率がいいときも多いですが、ある程度の大きさになってくるとone man経営が問題化してくることもあります。空気の読めない大企業が社会問題化することもあります。

どのような組織もそうですが、有能な人物に全てを任せていれば万事OKなことなどそうありません。状況は多岐に渡り、全ての状況に対応できるだけのcapacityを備えた人物などいません。人間は脆いものです。簡単に肉体や精神を病んでしまいます。権力者がたった1人のとき、彼または彼女が肉体的、精神的に参ってしまったとき、経営陣や従業員たちはどうすればいいのでしょうか。さらに言えば、大株主がそのまま最高経営者になっていることも多いので、問題は深刻になりがちです。

社会の複雑化、高速化の影響か、昨今は肉体や精神を病む人が特に多くなっているようですが、そのようなときに独裁的な大株主が明後日の方向を向いているような、頓珍漢な裁定をしまくってしまったとしたら、それこそ社会にとって多大な損失です。かの有名なNazis Deutscheの総統Adolf Hitlerでさえ、戦争後期にはそのような状態に陥りました。国や地方自治体ではそのような危険を抑えられるような仕組みがありますが、株式会社は違います。それが株式会社の脆弱性です。

また、独裁的な大株主は民衆の意向を把握することに失敗する可能性があります。民衆の大多数は慎ましい生活をしていますし、株式会社で大きな議決権を行使できるほどの株式を保有していません。全く住む世界が異なるわけです。そのような差異があるのに、大株主は民衆や消費者の動向を正しく認識できるのでしょうか。3人寄れば文殊智慧と言いますが、1人で考え、決めるよりも、大人数で物事を考え、決めたほうが大抵の場合は上手くいくものです。


それではどうすれば株式会社の議決権の問題点を解消できるのでしょうか。それには幾つか方策があると思いますが、I.S.としては、株主総会の上下両院化を提案します。具体的には、保有株数による議決権と1株以上保有している株主であることによって与えられる1票の議決権の2系統の議決権を設け、2系統のどちらの議決でも規定以上の賛成がなければ株主総会の議決として有効でないとするということです。これは連邦制国家の上院下院の概念に近いです。1株以上保有している株主であることによって与えられる1票の議決権は上院における各州に与えられる各州同数の議決権、保有株数のよる議決権は下院における人口比率に等しい議決権に似ています。

これは中小株主の意見が封殺されないため、民主的な株式会社の運営を期待できます。大株主の株数に意味が全くなくなるわけではありません。所謂上院下院のいずれでも規定以上の賛成が必要なわけですから、大株主は事実上拒否権を保有していることになります。そのため、自分の権利が大きく損なわれるような案に対しては、それに反対して廃案にすることが可能です。株主でない外部の人間の意見は全く反映されませんが、株式会社にそこまで要求することもないでしょう。しかし、中小株主の庶民に近い感覚が株式会社の運営に対してplusの方向に働くことは大いに期待できます。


工業化を成し遂げ、国内のinfrastructureをある程度充実させてしまった国では中々効率的な商売をすることが難しくなってきます。昔ながらの会社のやりかたでは社会の動向に付いていけないことも多いでしょう。さらに言えば、民衆がInternetなどの力を借りて以前では考えられなかったほどの情報と知識を有している昨今では並大抵のことでは消費者に受けるようなserviceを生み出すことはできません。企業の不正もすぐに明らかになってしまいます。よりopenでよりclearな会社運営が求められているわけです。そのようなときに庶民感覚のない大株主の存在は社会的に大きな害悪になる可能性があります。そうならないためにも、株主総会の上下両院化を検討する価値はあると思います。